紙から漏れる蝋燭の灯りによって、空間を温かく演出する提灯。その歴史は16世紀に遡り、その後、細い竹を用いた円状の骨組みに紙を貼り、上下に伸縮する現在の形の原型が作られたとされる。17〜19世紀には生活に欠かせない照明として庶民に浸透。江戸手描提灯は、当時の文字や家紋の描き方を受け継ぐ。家紋とは、貴族や武家、商人らが、自らの家系や家柄を示すために装飾品や武具に記した模様のことで、ヨーロッパで貴族や騎士が用いた紋章に似ている。家ごとに描き順などのルールが細かく定められているが、職人はどんなに複雑な家紋でもフリーハンドで描き、文字と家紋が程よいバランスに収まった“江戸の型”を崩さない。その高い技術は新しい試みにも応用され、近年ではキャラクターやロゴ、あるいは外国人の名前を当て字にして描くこともある。折りたたむことで持ち運びしやすく、広げたときにインパクトのある提灯は土産物にも最適で、インテリアやランプシェードとして室内をさり気なく彩ってくれる。
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